グループ法人税制

投稿日2000.01.01

グループ企業支援サムネイル

制度の概要

グループ法人税制は、企業グループが一体的経営を行っているという現状を踏まえて、グループ全体を一体として課税関係をとらえようとするものです。このような企業グループに関する税制としては連結納税制度がありますが、グループ法人税制はグループ内取引で発生した一定の損益を繰延べるものの、グループ間の所得通算まではせずに、単体納税を維持するという点で、連結納税制度より一体化の度合いが緩やかな制度といえます。

このグループ法人税制では、すべての100%グループ内(完全支配関係)の法人間の取引等について、次のような特例が強制的に適用されます。

対象となる法人グループ

(1)完全支配関係

グループ法人税制が適用される法人グループとは、完全支配関係がある法人間のグループ(100%グループ)です。この完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係など、基本的に株式の所有関係がそのグループ内で完結している下記のような関係をいいます。

<当事者間の完全支配関係(親子関係)>

<完全支配関係がある法人相互の関係(兄弟関係)>

(2)留意点

連結納税制度では、グループの頂点となる「一の者」は法人に限られています。しかし、グループ税制においては頂点となる「一の者」は法人に限らず、個人であってもグループの頂点となり得ます。頂点が個人である場合には、その個人と親族等特殊な関係にある個人を含んで判定します。

完全支配関係の判定は、原則として100%の保有関係を指しますが、従業員持株会がある場合(その所有割合が5%未満の場合に限る。)などには従業員持株会の所有株式を除外して判定するなどの例外規定があります。

連結納税制度同様に子会社であっても外国法人はグループ税制の対象になりません。しかし、連結納税制度と異なり、その外国法人の子会社が内国法人である場合、その子会社である内国法人はグループ法人税制の対象となります。

譲渡損益の繰延べ

(1)概要

内国法人が譲渡損益調整資産を100%グループ内の法人に譲渡した場合、その譲渡損益を繰り延べます。
この繰り延べられた譲渡損益は、その後、新たな所有者の下で、譲渡されたり、減価償却されるなど一定の事由が発生した段階で、損金または益金となります。

(2)譲渡損益調整資産

この規定の対象となる資産(譲渡損益調整資産)とは、次に掲げる資産をいいます。
ただし、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満のものは除かれます。
 1.固定資産
 2.土地(棚卸資産たる土地含む)
 3.有価証券(売買目的有価証券、譲受法人において売買目的有価証券とされるものを除く)
 4.金銭債権
 5.繰延資産

(3)譲受法人における一定の事由

繰り延べられた譲渡損益が、損金または益金となる一定の事由とは下記のような場合です。
 1.譲渡
 2.減価償却
 3.評価換え
 4.貸倒れ
 5.除却
など。
譲受法人において上記の事由が生じた場合には、譲受法人はその旨を譲渡法人に通知しなければなりません。
この通知を受けた譲渡法人は、繰り延べられた譲渡損益のうち、上記事由に対応する部分として一定の金額を損金または益金に算入します。

寄附金・受贈益

(1)概要

内国法人が、「法人による」完全支配関係がある他の法人に対して支出した寄附金は全額損金不算入となります。また、その寄附金を受領した法人においては、その受贈益は全額益金不算入となります。

(2)対象となる法人グループ

前記2.(2)にあるように、グループ法人税制は、法人に限らず、個人を頂点とする法人グループをも適用対象としていますが、この規定だけは「法人」を頂点とした法人グループ(下図法人Aと法人C)に限定されます。

(3)寄附金の範囲

この制度は従来からの「寄附金」の定義に変更を加えるものではなく、寄附金の処理を定めたものです。
したがって、寄附金、拠出金、見舞金などの金銭やその他の資産の贈与の他、低額譲渡、無利息貸付など実質的な経済的利益の供与とみなされるものなど、従来から税務上寄附金とされるものはすべてこの制度の対象となります。

(4)親法人による子法人株式の寄附修正

上記の寄附があった場合、寄附をした法人及び寄附を受けた法人の株式価値に変動が生じることから、それらの株式を保有する親法人において、その子法人株式の税務上の帳簿価額に一定の調整を加えることとされています。
この調整は、税務上の帳簿価額(法人税申告書別表5(1))を直接修正するため、この寄附修正による損金または益金の計上はありません。

現物分配

概要

現物分配とは、法人がその株主等に対して、配当等として金銭以外の資産を交付することをいいます。
100%グループ内でされた現物分配(適格現物分配)では、現物分配をする法人(現物分配法人)において分配する資産の譲渡損益を認識しません。
また、現物分配を受けた法人(被現物分配法人)においては、分配された資産の取得価額は現物分配法人の帳簿価額を引き継ぎ、現物分配を受けたことによる利益(受取配当等)は益金の額に算入されません。

受取配当等の益金不算入

概要

100%グループ内の法人から受けた配当等については、全額益金不算入となります。
関連法人株式等に係る受取配当等については、負債利子を控除した金額の全額が益金不算入となります。

区分益金不算入額
100%グループ内株式等・連結法人株式等全額
関連法人株式等(1/3超保有)関連法人株式に係る負債利子控除後の全額
非支配目的株式等(5%以下保有)20%相当額
 その他 50%相当額

株式の発行法人への譲渡損益

概要

内国法人が、100%グループ内の法人の株式をその発行法人に対して譲渡(取得法人にとっては自己株式の取得)した場合、その譲渡に係る譲渡損益は認識せず、譲渡した法人の資本金等の額を加算または減算します。

中小企業向け特例措置の不適用

(1)概要

資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある法人については、資本金が1億円以下の法人であっても一定の中小企業向け特例措置の適用ができません。

(2)対象となる法人

特例の対象となる法人は、下記に該当する大法人による完全支配関係がある法人です。
 1.資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人
 2.保険業法に規定する相互会社
 3.法人税法4条の7に規定する受託法人
適用対象は、これらに該当する大法人のみによって直接または間接に支配されている法人であり、一部でもこれらに該当しない法人(中小法人)による支配があれば適用対象となりません。

(3)不適用となる中小企業特例

この制度の対象となる法人は、以下の中小企業特例の適用ができなくなります。

A.軽減税率

各事業年度の所得の金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の税率は15%とされています。

B.特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用

特定同族会社の留保金が留保金控除額を超える場合に、通常の法人税額に加えて一定の金額を加算する制度の適用がないこととされています。

C.貸倒引当金の法定繰入率

一括評価債権に係る貸倒引当金繰入額の損金算入限度額の計算において、貸倒実績率による計算の他、一定の法定繰入率により計算することが認められています。

D.交際費等の損金不算入制度における定額控除制度

交際費等の損金不算入額の計算において、年800万円以下の部分は損金の額に算入されます。

E.欠損金の繰戻還付

欠損金の繰戻還付制度による還付を受けることができます。

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